Liner Notes

Album『SCRAMBLE』セルフライナーノーツ
ASKAが10曲に込めたこだわり 思い入れを公開

約7年ぶりにリリースされるオリジナルアルバム『SCRAMBLE』。
収録曲はすべて手塩にかけられ、大事に制作されてきました。10曲それぞれにある、ASKAのこだわり箇所、今だから明かせる制作エピソードなどを紹介していきます。

『UNI-VERSE』

作詞/作曲:ASKA 編曲:澤近泰輔
(※2008年10月1日シングル曲としてリリース)

 これはもうだいぶ前にリリースした曲ですが、自分としてはとても思い入れのある曲です。僕は、シングル音源のままでアルバムに収録しようと思っていましたが、スタッフのほうからミックスをやり直したいという意見があって、それならぜひということで、リミックスに踏み切りました。シングル音源よりもコーラスが出ているので、新鮮に聴いていただけるのではないかと思います。
 この曲は何度もステージで歌ってきましたが、歌っていると、お客さんが笑顔を見せてくれるんです。みんなが笑顔になれる曲なんだって解釈しながら、だからこの曲を歌うのが楽しみでもありました。でも、あるとき気がついたんです。この曲を歌っているとき、僕が笑顔になっているからお客さんもそれに応えてくれて笑顔になっている……ということを。また、ライブで歌える日を楽しみにしています。

『いろんな人が歌ってきたように』

作詞/作曲:ASKA 編曲:澤近泰輔

 今回のアルバムで、自分がいちばん投影されている楽曲はこの曲なのかなと思っています。
 曲を作るとき、テーマになるべくたくさんの粒を集めて、そこから何を歌っていくべきかを決めていくんですが、最終的に行き着く答えは、“愛”を大事に歌っていくことなんだと思うんです。結局、シンガーはみんなここに向かって歩いていくんだな、それを照れなく歌っていけるものなんだな……。こういう考えに気づいたシンガーのひとりでいられてよかったと、そして、そういう感覚が自分の中に生まれた喜びを感じながら、この曲をずっと大事に歌っていけたらと思います。

『朝をありがとう』

作詞/作曲:ASKA 編曲:十川ともじ

 時間の中で僕たちは生きていて、黙っていても時間はどんどん進んでいきます。どんなに楽しくても、どんなに悲しくても、それはその人だけの話で、無情にも時間は進んでいきます。すべて時間によって運ばれていくから、苦しんでいても時間は過ぎていくし、悲しんでいても景色は作られていく。結局、目に見えるものは、時間と一緒で前しかないんです。そういうことを踏まえて、いろんなことを片付けてくれるのは時間なんだから、毎日やってくる朝に感謝、“朝をありがとう”、という気持ちで作った曲です。

『L&R』

作詞/作曲:ASKA 編曲:ASKA
(※2009年2 月25 日リリース『あなたが泣くことはない』カップリング曲)

 『UNI-VERSE』同様、この曲もライブで何回か歌ってきました。ライブでのアレンジがすっかり体に馴染んでいるので、ギターのリフを思いっきり全面に出して、前に進んでいく力強さが出るようなミックスにしました。ライブでみなさんが聴いてくれた、そのままを再現したような感じです。
 アルバムが完成したときは、この曲が気持ちよくて、家で何回も聴いていました。それくらい気に入った仕上がりになりました。

『どんなことがあっても』

作詞/作曲:ASKA 編曲:澤近泰輔

 これも自分に向けて作った曲です。“50才を過ぎたところで自分の人生の尻尾が見えてきて、人生の輪郭がぼんやりと見えてきた”と、ステージで言っていました。あのとき見えた輪郭は今も変わらないけれど、今後どんなことがあるかわからないのも人生。どんなことがあっても、どんな本当のことでも、どんな誤解でも、この人の側にいたいと思ってもらえるような“歌”。そういうものを書いてみたい……と思っている曲です。
 “本当の歌”というのは、簡単に辿り着けるものではありません。どうしても辿りつけない一歩に時間が答えを出させてくれます。自分自身に歌った曲です。

『SCRAMBLE』

作詞/作曲:ASKA 編曲:ASKA・旭純

 僕の愛する昭和歌謡を意識した曲です。こういうサウンド感を目指して、ずいぶん早いうちに曲は出来上がっていたのですが、なかなか歌詞が完成せず、時間がかかってしまいました。
 久しぶりに女性が歌う歌詞にしてみようと、女性目線の歌詞で進んでいたときもありましたが、どうしてもそこに自分が存在できなくて、今度は男性が歌う歌詞に戻したり、やっぱり女性にしてみたりと、何回も何回も書き直しました。その間、この曲から遠ざかっていた時期もありましたが、最後にきてようやく完成しました。
 混沌とした世界観ですが、過ぎてしまえば景色は見えるという歌詞です。1行目の「まるでブレーカーが落ちたみたいに動けなくなった」は最初から決まっていて、この1行にこだわるあまり苦しみも増していきました。歌詞作りには“1行目まで”の距離というのがあって、1行目がなかなかできないときがあるんだけど、この曲に関しては、“1行目から”の距離でした。結果的に満足いくものに仕上がったと思っています。

『歌の中には不自由がない』

作詞/作曲:ASKA 編曲:ASKA・旭純
(※2012年1月21日シングル曲としてネット配信リリース)

 今、自分たちが知らされているのは、ちょっとした表面的なことで、裏ではどうしようもない事情が絡みながら進んでいっている。そういうことを知っていながらも、僕らはそれを受け止めて進んでいくしかないんだってことを表現しました。
 実際は家族であったり、恋人同士であったり、友達同士であっても当てはまることです。どれだけの仲だとしても、触れてはいけないところは絶対にあります。世の中をわけるなら、自分とそれ以外だから。そんな裏側をテーマにして、マックスからミニマムまでをイメージしながら書いてみました。

『あなたが泣くことはない』

作詞:松井五郎・ASKA 作曲:ASKA 編曲:村田努・小笠原学
(※2009年2月25日シングル曲としてリリース)

 スタジオに入って、五郎(松井五郎氏)とあれこれ言い合って、お互いに言葉を楽しみながら作りました。
 僕がいちばん言いたかったのは、2コーラス目の頭です。「冷たい雨も 降り注ぐ光も 見上げようとすれば 同じ顔になる」。ここがいちばん表現したかったところです。

『水ゆるく流れ』

作詞/作曲:ASKA 編曲:澤近泰輔

 40代になってから、近しい人たちの身内の方が亡くなることが増えていきました。人は誰もが、この年代で経験することだと思います。同時に、ここ数年すべての出来事に感謝しなければと思うようになりました。友人などにもそうです。お酒もそんなに飲めないので、改めてそれを伝えることの照れはありまして、付き合いのなかで伝わっていけばいいやと思っています。「おまえには感謝」という思い。そのひとつ向こうには、友人たちの親に対しての感謝があります。友人を生んでくれたこと、会わせてくれたこと、導いてくれたことへの感謝です。そういう、ひとつ向こうにいる人への感謝の気持ちを歌いました。

『僕の来た道』

作詞/作曲:ASKA 編曲:澤近泰輔

 一昨年に、東京厚生年金会館のアンコールで披露させていただきました(『ASKA 10DAYS SPECIAL グッバイ&サンキュー東京厚生年金会館 −ここにあなたの足跡を−』2010年2月開催)。まだ歌詞がない“ラララ”の状態でした。あのときの曲に歌詞がついたのが、この曲です。
 堂々と生きていけるっていうのは、どういうことなんだろうと考えたことがあります。誰にもみんな知られたくないことのひとつやふたつはあるはず……。そして、それを隠していられるか、いられないか、なんだ……と思います。
 “陰”と“陽”があってのバランスです。表情の表面と内面との違いも、ときにはあるでしょう。裏の顔がないのは素晴らしいことなのでしょうが、それではバランスが保てません。多くの人が、表向きの顔で日々生きています。そこで堂々としていられるのは、その人が“陰”の部分をうまく隠せていると思っての表情だから……とは一概に言えませんが、多少なりの影響はあるはずです。人はすでに子供の頃から“陰”と“陽”を使い分けていたのでしょう。
 誰かに見られているなら、どうあってもハンサムな道を歩きたい。ある人にとっては、それを崩されたら“生きていけない”出来事だってあるはず。堂々とした顔を見せていくことを、“ハンサム”という言葉にしてみました。

(オフィシャルファンクラブTUG OF C&A会報vol.282(2012年10月号)より)